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 那須正幹(1942〜)の現代児童文学の人気シリーズの第一作目である。今日でもなお、明るいユーモアに満ちた本作は子ども達の熱い支持を受けている。
 シリーズ第1作目は短篇連作集である。物知りで勉強好きなのにテストは苦手のハカセ、やんちゃでいたずら好きのハチベエ、のんびり屋で優しいモーちゃん。第1話「三人組登場」では、ハカセがピンチに陥り2人に助けられる。ハカセが自宅のトイレで勉強をしていると、2人組みの泥棒が侵入してきた。幸い泥棒は気付かないものの、ハカセは逃げるに逃げられず、声も出せない。ハチベエとモーちゃんがハカセの家を偶然通りかかったところ、するすると白い紙が降りてきた。ハカセはトイレットペーパーに助けを求めるメッセージを書いたのだ。ところがこれが難しい漢字ばかりで2人には読めない。大騒ぎの末にようやく一件落着を迎える。最終話「ゆめのゴールデンクイズ」では、人気クイズ番組に出場することになってしまったモーちゃんをハチベエとハカセが助ける。2人はハカセ考案のトランシーバーでステージ上のモーちゃんにこっそり解答を教えていたのだが、そこへ担任の先生が現われ、万事休す。案の定、モーちゃんは最後の問題で間違えてしまった。だが、モーちゃんは二人の力を借りず、実力で解答していたことがわかる。「いっしょうけんめいやったんだもの。最後は、すこしズッコケちゃったけどね。」「ズッコケ三人組ってところだね。」これが「ズッコケ三人組」の誕生だった。
 ストーリーは明快、ユーモアたっぷりでテンポよく展開する。3人組の活躍を助けるのが、初出の1976年4月『六年の学習』連載の「ズッコケ三銃士」以来、3人を描いてきた前川かずおの挿絵である(1992年『ズッコケ三人組対怪盗X』以来高橋信也:作画)。那須自身、前川の筆になる3少年を頭に描きながら原稿を進めるというだけあって、文と絵が固く結びついている。
 登場人物の中に悪意や翳りがなく、事件も身近で必ず一件落着することは、読者にとって安心して遊べる物語世界であり、大きな支持を受ける理由だろう。強い娯楽性のせいか、当初から否定的な意見を受けてきたことも事実である。しかし累計発行部数が2100万部を越え、シリーズが50編に迫り、今では最初の読者の子ども世代が読み継いでいるという事実は、あらためてこの作品の持つ大きな魅力を考えさせられる。
 2000年にこのシリーズでの巌谷小波賞、『ズッコケ三人組のバック・トゥ・ザ・フューチャー』で野間児童文芸賞を受賞。1985から翌86年に関西テレビ、1999年NHK教育、2001年NHK大阪でテレビドラマ化、1991年に大映、1998年東映による映画化、2004年4月からテレビ東京でアニメーション化もされた。2003年12月には『月刊プレコミックブンブン』の漫画連載も始まり、1987年にはファンクラブが誕生した。

[解題・書誌作成担当] 小野由紀