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 宮沢賢治の文学作品「銀河鉄道の夜」をヒントにしたSFマンガ。機械の身体を求めてアンドロメダまで旅する1人の少年を主人公に、人生とは、愛とは、永遠とはとかといった青春期の疑問を問いかける。人間性喪失の時代性を、ロマッチックな彩りと庶民的な日常感覚をもとに描写。戦後のSFマンガのなかでも時代を画した作品である。
 物語は機械の身体を手にした人類の住む地球を舞台に始まる。人々は多額の金を支払って、生身の身体を機械と入れ換えようとする。永遠に死ぬことのない生命を手に入れるために。人間として生身の身体をもつ少年星野鉄郎は、母が機械人間に殺されたのをきっかけに、宇宙へと旅立つ。銀河鉄道に乗り、機械の身体をタダで手に入れようと試みる。銀河鉄道を走る列車はアンドロメダを目指す。鉄郎は自分を助けてくれた女性メーテルとともに地球を離れ、さまざまな星をめぐり歩く。物語はその先々の出来事を一話完結形式で描き、最終駅アンドロメダまで続いていく。実際にある星、架空の天体などいろいろな星を舞台に、鉄郎とメーテルは多数の人々とめぐりあう。そして、機械の身体を手に入れることがはたして幸せに結びつくのか、しだいに疑問を抱くようになる。2人は最終駅アンドロメダに着くが、鉄郎はその星の部品の一部、小さなネジにされそうになる。しかし、メーテルの助けにより鉄郎は救われる。物語の最後で、メーテル自身が鉄郎の心が作り出した幻想の存在であることが明らかとなり、鉄郎の前から姿を消してしまう。
 連載は少年週刊誌『週刊少年キング』(少年画報社)に、1977年8月(推定)から始まった。松本零士(1938〜)はキング編集部の求めに応じ、日頃から温めていたテーマで描くことを承諾、電話口で即座にタイトルを伝えた。自伝『遠く時の輪の接する処』(東京書籍、2002)によれば、十代の終わり、福岡から上京する夜行列車のなかでの感傷的な体験が、物語の下地をなしているという。幻想的でロマンチックな描写のなかに、4畳半の下宿風景や下町の庶民の生活がミックスされている。そうした松本零士のマンガの持ち味がうまく生かされ、ミステリアスなドラマ展開ながら親しみのある作風がだだよう。
 1978年にはフジテレビ系でアニメ放映。1979年には東映動画によって劇場アニメ化され、81年、98年と製作が続いた。特に第1作は大ヒットし、ゴダイゴによる主題歌も大流行した。連載作品と「戦場まんがシリーズ」により、1978年度第23回小学館漫画賞を受賞。単行本は、1988年小学館より愛蔵版が出版され、1994年には少年画報社より全12巻の文庫版に収録された。

[解題・書誌作成担当] 竹内長武