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 はじめ藤子不二男(藤本弘と安孫子素雄の合作)の名で発表されていたが、のち藤子・F・不二雄(1933〜1996)の作と訂正。日本における幼少年向けの代表的なマンガ作品で、アニメ化を通じて海外にもその名が広く知られている。子どもの日常生活にSF的な発想をもちこんでいる点に特色がある。
 ドラえもんは、未来からやって来たネコ型のロボットである。20世紀の東京に住む小学生ののび太は、なにをやってもドジばかりという劣等生。のび太の子孫にあたるセワシ君は、のび太の世話をするため、未来からドラえもんをともなって現代にやってくる。そして、のび太の世話役、母代わりにドラえもんを置いていく。いじめられっ子ののび太は、ドラえもんに助けられ、なんとか学校生活、交遊生活を送るというもの。ドラえもんのポケットから出てくる秘密の道具が奇抜で、のび太は毎回それに助けられる。
 ロボットといえば、「鉄腕アトム」や「鉄人28号」のようなマイティなイメージが思い浮ぶが、ドラえもんはきわめてソフトなイメージのロボットである。ロボットとはいうものの、発想としては魔法使いの現代版といった趣があり、SFより日常ファンタジーといった雰囲気に近い。キャラクター設定もおもしろい。のび太がマンガに伝統的なアンチ・ヒーローを造形しているとすれば、ドラえもんは弱点はあるものの、問題解決を即座に行う点でスーパー・ヒーロー性がある。つまりのび太とドラえもんのコンビには、マンガ文化に固有の両極端のキャラクター設定が組み合わされており、それゆえに読者である少年の共感を呼ぶ。
 連載は小学館の学年誌『小学一年生』〜『小学四年生』、および『よいこ』『幼稚園』で同時に始まった。幼年向けでもあり、はじめはあまり注目されなかったが、79年のテレビアニメ化をきっかけに大ヒット。また1977年には藤子不二雄作品を中心に掲載した『コロコロコミック』の創刊にあわせ、学年誌の作品を再掲載して人気を高めた。
 テレビアニメが人気となってからは劇場向けのアニメも製作され、毎年多くの客を動員した。単行本は小学館版のほか、1984年に中央公論社から出された『藤子不二雄ランド』にも収録されている。1988年に、藤子不二雄はコンビ分かれをする。藤子・F・不二雄と藤子不二雄A(Aは○で囲まれている)とそれぞれの名乗り、「ドラえもん」は藤子・F・不二雄の作であると公表された。1996年、作者の死とともに作品は中断。劇場アニメ公開にあわせて、その後は藤子プロのスタッフが作品を書きついだ。本書は全45巻(1974〜1996)のうちの第1巻である。
 1978年には同作品により第2回日本漫画家協会賞優秀賞受賞。

[解題・書誌作成担当] 竹内長武