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 『ぐりとぐら』は青い服を着たぐり、赤い服を着たぐら、2匹のネズミが主人公の物語絵本。擬人化された動物キャラクター、食べ物素材、力を合わせる行為、分かち合う喜びなど、子どものための物語に必要な要素で構成された、当代随一の人気絵本。
 「おりょうりすること たべること」がこの世で一番好きな野ネズミのぐりとぐらは森へ出かけた。そこで、大きな卵をみつけた2匹は、いい考えを思いつき、工夫を凝らして大きなカステラを作った。森中の動物たちが集まってきて、みんなで食べたカステラの「その おいしかったこと!」。残った卵の殻でぐりとぐらの作ったものは大きな車だった。
 この絵本は、まず、中川李枝子(1935〜)文、大村百合子(1941〜)挿絵による表題「たまご」で、「三歳の子どもに聞かせる話」として福音館書店月刊雑誌『母の友』(第119号、1963.6)に発表された。中川は、保育者として15年の経験をつみ、児童文学グループ「いたどり」同人として創作活動を続けており、中川の実妹である大村(後、山脇)は、専門的な美術教育を受けないままに、高校生の時から中川作品の挿絵を描いていた。子どもの興味を熟知した中川の文と、無垢な姿勢で描く大村の挿絵でなる「たまご」は、編集者・松居直の目にとまり、「たちまちに一冊の絵本のイメージ」に組み立てられた。その結果、書名を「ぐりとぐら」に改め、プロットの変更、会話表現の整理、場面構成の変更などの加筆や削除を行い、福音館書店の月刊物語絵本『こどものとも』(第93号、1963.12)で絵本化された。『こどものとも』で人気を得たこの絵本は、4年後に傑作集(1967)としてハードカバー化され、現在に至る。この際にも、例えば名前の「グリ」「グラ」のカタカナ表記が「ぐり」「ぐら」のひらがな表記に変更されるなど、『こどものとも』に若干の修正が加えられた。
 『ぐりとぐら』は、ペーパーバックとその後のハードカバーを合わせた発行部数・約355万冊(1996年現在)、傑作集だけで128刷・295万冊(2000年現在)、その傑作集は2004年8月では151刷(部数不明)と人気が高い。その後ぐりとぐらを主人公とする絵本は、『ぐりとぐらのおきゃくさま』(1966)などにシリーズ化されて数多く刊行されている。
 全国学校図書館協議会選定図書「基本図書」、厚生省中央児童福祉審議会特別推薦図書に選ばれた。

[解題・書誌作成担当] 大橋眞由美