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 小林純一(1911〜1982)の最初の作品集で、54編の童謡や少年詩が収められている。「あとがき」には「私が童謡を作り出して以来、昭和六年から昨十七年の夏に至る十二年間の足跡を示したものです。」とあり、『赤い鳥』への投稿にはじまり、同人誌『チクタク』『童魚』、さらには『童話精神』での創作活動から生み出された作品と、雑誌『コドモノクニ』『コドモノヒカリ』に掲載されたものが主に収められている。なかでも『コドモノクニ』掲載の作品は最も多く、16編を数える。「少国民詩集」と名づけられているが、定型の童謡スタイルで書かれたものが全体の約7割を占めている。
 56編の作品は「お父さんの子守唄」から「鮒をすくひに」までの11章に構成されている。中には「鼓笛隊」の章の7編のように戦時色を色濃く表わしたものもあるが、総じて
ナイーヴな抒情的作品と子どもの生活感情を素直にうたいあげた作品が多く、「病気」をはじめ「トマト」「明日は」「ちひさな職工」など、この時期の代表作は後者に属している。また最後に置かれた「鮒をすくひに」という作品は22ページに及ぶ長編詩で、実際にラジオ放送された朗読詩であった。脇田和のデッサン風の絵には素朴な味わいがあり、生活感のつよい小林純一の作品にふさわしい挿絵となっている。
 1940年代前半にあらわれた数少ない少年詩集のひとつであり、大戦後の少年詩や幼児童謡における小林純一の活躍につながる作品集である。初版5000部、再版3000部と奥付に記されている。

[解題・書誌作成担当] 畑中圭一