函と表紙 本文 挿絵

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 1930年代の生活童話を代表する作品集。川崎大冶(1902〜1980)は、プロレタリア児童文学の一翼を担う作家として、槙本楠郎等と『少年戦旗』の編集に携わる。1931年7月、プロレタリア童謡集『小さい同志』(自由社)を槙本楠郎と共編で出版。最初に執筆した童話は、1932年1月、『女人大衆』に発表された「瓦斯燈と子供」で、小川未明の童話の影響が見られる作品といわれ、1937年4月に出版された第1童話集『ピリピリ電車』に収録されている。『太陽をかこむ子供たち』は、第2童話集である。
 収録作品は、1937年から1940年にかけて書かれた10編である、表題作「太陽をかこむ子供たち」は、農繁期託児所の準備をする、世話役の4年生の子どもたちの姿を描いている。農作業に忙しい大人たちからも、小さい子どもたちからも期待されていることを感じながら、乏しい材料で思いを込めて託児所の旗を作り、その旗を雨から守る源太と真吉の姿は誇りに満ちている。この作品は、労働者街の子どもたちが、自主的に協力して思いやりを行動にあらわしていく姿を描いた「ピリピリ電車」と同じく、集団主義童話の理念を持つ代表的作の1編である。その他に、親の社会階級を反映した3人の子どもの葛藤を描いた「夕焼の雲の下」、貧乏だが空き缶で浮き袋を作り、飼い犬ゴンを仕込む器用な少年、五太郎と子どもたちの川遊びの姿を描いた「カンカン袋」など、貧しさの中で創意工夫を惜しまない、子どもたちの明るく、たくましい姿をとらえた作品を収録している。

[解題・書誌作成担当] 畠山兆子