表紙とジャケット 本文 挿絵

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 童謡「いぬのおまわりさん」「アイスクリームのうた」などの作詩で知られる佐藤義美(1905〜1968)の第一童謡集である。矢崎節夫によれば、この7年前(1925年)に童謡集『みなとの子』が童謡協会から出版されていた(『現代日本児童文学詩人名鑑』教育出版センター、1996)ということであるが、未見である。しかも、佐藤はみずから「後記」に「私の第一童謡集『雀の子』」と書いており、本格的な童謡集としてはこれが最初だという意識が強かったと思われるので、この記述に従うこととした。.
 収められた童謡50編は、佐藤が中学3年生の1921年から1932年までの12年間にわたって書かれたもので、これらは「十二年間に亘る私の童謡生活の足跡です」と後記に述べられている。「主として、『コドモノクニ』『幼年の友』『幼年倶楽部』『小学画報』その他の諸雑誌に発表して来たもの」だと同じく後記で述べているが、実際には『赤い鳥』に発表したものが多く、10編を数える。.
 50編の童謡は「蜂の家」から「港の子」までの10章に分けられ、各章はほぼ5〜6編の作品で構成されている。題材としては小動物や植物、天体などが多く、従来の童謡とあまり変わらないが、みずみずしい感覚や斬新な発想がところどころに見受けられ、第二次大戦後にすぐれた幼児童謡を数多く発表した佐藤義美の原点を窺うことができる。福田新生による挿絵は墨一色の線画である。1997年大空社から復刻版が出た。

[解題・書誌作成担当] 畑中圭一