表紙と函 本文 挿絵

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 長編少女小説。横山美智子(1905〜1986)にとって、少女小説として執筆した最初のもの。横山美智子はそれまで『少年倶楽部』『キング』といった雑誌を中心に黒田道夫(黒田は結婚前の旧姓)・横山美智夫の男性ペンネームで作品発表し、それらの短編12編を収録した『級の光』(大日本雄弁会講談社、1929)を出し、名を知られつつあった。
 「嵐の小夜曲」の初出は『少女の友』(実業之日本社)で、連載されるや人気を博したのだが、単行本として出版したのは実業之日本社ではなく大日本雄弁会講談社だった。主人公・小夜子の前に立ちはだかる困難を乗り越え解決するという物語は、あまりにも都合よく出来すぎているという難点はあるものの、変化の多い筋や、曲芸の少女、富豪の令嬢など登場人物にも趣向をこらしたこと、また作品に散りばめられたキリスト教的雰囲気が、当時の少女の心を魅了した。講談社のビルはこの本のおかげで建ったという冗談があったくらいのベストセラーとなり、54版もの重版となった。『少女の友』掲載時には深谷美保子の挿絵であったが、本書では『少女倶楽部』『少女画報』『令女界』を舞台に活躍していた新進抒情画家・加藤まさをの装幀・口絵・挿絵で物語のイメージがさらに艶やかになっている。ただし、のちに横山自身が「売れましたねえ。題名がよかったんでしょう」(『夢をつむぐ』光村図書、1986)と述べた題名は、ヴァイオリン曲「クラシスラーやセレナーデ」や物語の筋とは関係がさるとは思われず、題名だけが一人歩きした感がある。

[解題・書誌作成担当] 森井弘子