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 「日本昔噺」に続く全24編の叢書「日本お伽噺」の第1編として刊行された歴史読物。造本などは日本昔噺のスタイルを踏襲する。神話も含めて歴史譚が多数を占め、昔話類は少ない。博文館は、同時期に「日本歴史譚」(全24巻)を刊行しているが、題材は、重複を避けるように配慮したかと思われる。
 歴史譚が多いのは、日清戦争を背景に、ナショナリズムの高揚による自国への関心が強まった結果と考えられる。ただし、歴史譚のようにもみえるが、「日本お伽噺はお伽噺にて、決して歴史噺には御坐なく候」と「前書き」に述べるように、物語の面白さが中心であって、知識読物ではない。
 文体は、「日本昔噺」の時のような書きことば的表現は影をひそめ、滑らかな語りの文体が用いられている。第1編に『八咫烏』のような皇室関係のエピソードを置いたのは、1890年の教育勅語の影響が考えられる。しかし、皇室関係者は叢書全体の登場人物のなかではわずかで、多くは武人、軍人であった。小波がのちに主張することになる尚武冒険を語りやすい人物に着目した結果であろう。巻末に附録として自作のお伽噺を掲載している。当時の少年雑誌には、附録があったので、それを真似たものかもしれない。前書きでは附録にも触れて、自負を述べている。
 とくに目立った同時代評は目にしないが、雑誌などに紹介文が掲載されるなど、関心はもたれていた。後に『改訂/袖珍|日本お伽噺』(博文館 1913)を刊行したときに、文末の読者への直接的語りの部分を削除し、物語の独立性を強めるよう改めている。その他にかなづかいを表音式にし、語句の表記を、平易にするなど、読者への配慮がみられる。
 1975年11月臨川書店より復刻版が刊行された。

[解題・書誌作成担当] 藤本芳則